人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
そこは内部が神殿のような造りになっており、壁際には上から下までびっしりと蔵書が詰め込まれている。
イレーナは目を輝かせながら入室しようとして、立ち止まった。
護衛騎士3人がぴったりくっついていてはゆっくり本を選ぶこともできない。
「あの、あなたたちはここで待っててくれる? 本を借りたらすぐに戻るから」
やんわりと言ったつもりだ。
しかし騎士たちは硬い表情でまっすぐ立ち、真面目に言い放つ。
「妃さまの身に何かあっては我々自害しなければならなくなります」
「大袈裟……」
イレーナは呆れてしまった。
おそらくヴァルクに何があっても妃のそばを離れるなと命令されているのだろう。
イレーナは少々うんざりする。
「だったら少し離れたところで待機していて。見える範囲ならいいわよね?」
「御意」
イレーナはため息まじりに彼らのそばを離れた。命令どおり、彼らはその場から動かない。
視線がかなり気になるも、せっかくの本の宝庫だ。
全力で楽しまなくてはならない。