人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
イレーナはせめて命だけは助けてもらえるよう何とか交渉しようと思った。
「はじめまして。イレーナと申します」
イレーナは丁寧に挨拶をおこなう。
すると、アンジェも自己紹介をした。
「アンジェと気軽に呼んでくださってかまわないわ。ああ、そうそう。人がいるのがあまり好きではないの。だから侍女もひとりしか付けないのよ。あなたの侍女も出ていってくれるかしら?」
この部屋の前には護衛騎士がふたりいる。
部屋には侍女がひとり控えていたが、そそくさと出ていった。
「わかりました。リア、部屋に戻っていいわ」
「しかし……」
「大丈夫よ。私もアンジェさまとふたりきりでお話がしたいと思っていたの」
不安げな表情のリアに向かってイレーナはにっこり微笑む。
リアは渋々部屋を退室した。
この部屋には正妃と側妃のふたりきり。
イレーナはいろんな意味で複雑な気持ちになる。
「お座りになって。紅茶を飲みましょう」
「はい、では失礼します」
イレーナはアンジェと向かい合って座った。