【週一更新】冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
「えっ……。瑞希と? あー、う、うん、付き合ってるかな、一応……」
歯切れの悪い返事に瑠香は違和感を覚えた。
瑞希から聞いた話の温度と違いすぎる。
その途端、瑠香の中で何かが吹っ切れ、緊張という言葉がどこかへ消えてしまった。
「一応って何よ!? なんとなくで付き合ってるわけ?」
「あっ……。い、いや、そうじゃなくて……」
「そうじゃないなら、どういう意味なのっ!」
誠也の肩を激しく揺らしながら必死に詰め寄る瑠香。
完全にお怒りモードで我を忘れているのが見て取れる。
「ち、ちょっと落ち着いてよ瑠香。落ち着いてくれないと危ないから」
「私は落ち着いてるよっ! やましいことがあるのは誠也の方じゃ──」
力の限り揺らしたせいで、誠也がバランスを崩し始める。
ベッドへと倒れ込みそうになると、瑠香も引き寄せられ──。
「──!?」
そのときふたりの時間は止まった。
ベッドに倒れ込んだ誠也に、瑠香は覆い被さるような体勢。
抱き合っている──この状況を見た人なら誰しもがそう思うのは間違いない。
いや、それだけではない。
唇に感じる湿った感触。幻でも妄想でもなく現実世界で起きたこと。
これでは瑠香が誠也を押し倒してキスをした。そう思われても仕方のない体勢となっていた。
思考が完全に停止する。
何が起きたのかまったく分からない。
目の前には誠也の顔。唇は誠也のと重なり、遅れて湧き上がる羞恥心。
固まったまま長い時間がすぎ、ようやく状況を理解したのは数分後であった。
「あ、あの……。これは……」
「うん、事故だよ、事故だからね。私はきにしてないから」
事故扱いにしなければきっと暴走してしまう。
瑠香は込み上げてくる想いを押し込め、なんとか冷静さをたもとうとした。
「ねぇ、誠也。誠也は西園寺さんとキスはしたの?」
怖いものなどなかった。
この流れならなんでも聞けると瑠香は思っていた。
「な、何をいきなり……」
「答えて! ちゃんと私の質問に答えてよ!」
両手で誠也の顔を掴み逃げられないようにする。
どんな答えが返ってこようと、瑠香は本当のことを知りたかった。
「──てないよ」
「えっ? 聞こえないんですけど」
「してないよっ! 西園寺さんとはキスなんてしてない。それに、事故とはいえ、あれが初めてだったから……」
「そ、そうなんだ。誠也のファーストキスの相手は私なんだ」
心が軽くなった瑠香。
瑞希に勝った気がして浮かれてしまう。
誠也のファーストキス──それは自分にとってもそうであった。
「ねぇ、西園寺さんと付き合ってるのは、何か事情があるんでしょ?」
「そ、それは……」
「ううん、言わなくていいよ。だ、か、ら、この事故はふたりだけの秘密にしてねっ」
ぐらついていた気持ちは安定性を増し、瑠香は心に余裕が出来た。
瑞希がどう思っているのか分からない。だけど、少なくとも誠也は、自らの意思で付き合っていないと分かっただけで十分。
満面の笑みを取り戻した瑠香は、何事もなかったかのように誠也の部屋をあとにした。
歯切れの悪い返事に瑠香は違和感を覚えた。
瑞希から聞いた話の温度と違いすぎる。
その途端、瑠香の中で何かが吹っ切れ、緊張という言葉がどこかへ消えてしまった。
「一応って何よ!? なんとなくで付き合ってるわけ?」
「あっ……。い、いや、そうじゃなくて……」
「そうじゃないなら、どういう意味なのっ!」
誠也の肩を激しく揺らしながら必死に詰め寄る瑠香。
完全にお怒りモードで我を忘れているのが見て取れる。
「ち、ちょっと落ち着いてよ瑠香。落ち着いてくれないと危ないから」
「私は落ち着いてるよっ! やましいことがあるのは誠也の方じゃ──」
力の限り揺らしたせいで、誠也がバランスを崩し始める。
ベッドへと倒れ込みそうになると、瑠香も引き寄せられ──。
「──!?」
そのときふたりの時間は止まった。
ベッドに倒れ込んだ誠也に、瑠香は覆い被さるような体勢。
抱き合っている──この状況を見た人なら誰しもがそう思うのは間違いない。
いや、それだけではない。
唇に感じる湿った感触。幻でも妄想でもなく現実世界で起きたこと。
これでは瑠香が誠也を押し倒してキスをした。そう思われても仕方のない体勢となっていた。
思考が完全に停止する。
何が起きたのかまったく分からない。
目の前には誠也の顔。唇は誠也のと重なり、遅れて湧き上がる羞恥心。
固まったまま長い時間がすぎ、ようやく状況を理解したのは数分後であった。
「あ、あの……。これは……」
「うん、事故だよ、事故だからね。私はきにしてないから」
事故扱いにしなければきっと暴走してしまう。
瑠香は込み上げてくる想いを押し込め、なんとか冷静さをたもとうとした。
「ねぇ、誠也。誠也は西園寺さんとキスはしたの?」
怖いものなどなかった。
この流れならなんでも聞けると瑠香は思っていた。
「な、何をいきなり……」
「答えて! ちゃんと私の質問に答えてよ!」
両手で誠也の顔を掴み逃げられないようにする。
どんな答えが返ってこようと、瑠香は本当のことを知りたかった。
「──てないよ」
「えっ? 聞こえないんですけど」
「してないよっ! 西園寺さんとはキスなんてしてない。それに、事故とはいえ、あれが初めてだったから……」
「そ、そうなんだ。誠也のファーストキスの相手は私なんだ」
心が軽くなった瑠香。
瑞希に勝った気がして浮かれてしまう。
誠也のファーストキス──それは自分にとってもそうであった。
「ねぇ、西園寺さんと付き合ってるのは、何か事情があるんでしょ?」
「そ、それは……」
「ううん、言わなくていいよ。だ、か、ら、この事故はふたりだけの秘密にしてねっ」
ぐらついていた気持ちは安定性を増し、瑠香は心に余裕が出来た。
瑞希がどう思っているのか分からない。だけど、少なくとも誠也は、自らの意思で付き合っていないと分かっただけで十分。
満面の笑みを取り戻した瑠香は、何事もなかったかのように誠也の部屋をあとにした。