【週一更新】冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
 艶やかで長い青髪が風で靡いている。
 地上に降りた天使、その言葉が一番しっくりくる。
 知らないわけではないが、しっかり見たのはこれが初めて。

 別世界にでも迷い込んだと思っていると、瑞希の方から話しかけてきた。

「来てくれたのね。もしかしたら来ないかなって思ってたから……」

 話に聞いていたのは冷たく感じる声。
 だが今の瑞希は、顔を僅かに赤く染め恥じらいながら話している。その言葉遣いは噂とは真逆だった。

「え、えっと、手紙読みました。それで僕に話ってなんでしょうか」

 緊張からか声が少しだけ裏返ってしまう。
 心臓の音は激しくなる一方で、離れている瑞希にも聞こえそうであった。

「それはですね……。お願いします、私の恋人になってください!」

 幻聴なんかではない。
 確かに『恋人になって』と言っていた。
 からかっているのかとも思ったが、深く頭を下げる姿はとても騙しているようには見えなかった。

「あの、それはいったいどういう意味でしょうか?」

 突然すぎる告白につい聞き返してしまう誠也。
 本気なのか? そう思うのも無理はない。何も取り柄がないのに、学校一の美少女から告白されるなど、世界七不思議に入るほどの珍事だからだ。

「誠也さんは私のことが嫌いでしょうか? 嫌いでなければ恋人になって欲しいんです。お願いします、どうか私の告白を受け入れてください」
「西園寺さんのことは嫌いではないんですけど、僕はひっそりと学校生活を送りたいんです。だからその……ごめんなさい」

 場の雰囲気に一切流されず、誠也は毅然とした態度で告白を断った。
 が……そこから状況が一変してしまう。
 穏やかで可憐だった瑞希の態度が反転し、まるで別人のように変貌してしまった。

「悪いけど誠也に断るという選択肢はないわよ?」
「えっ……」
「ふぅ、この私からの告白を断るだなんて、やっぱり思った通りですわ」

 言葉の意味を理解できなかった。
 選択肢がないとはどういうことなのか。
 様々な疑問が誠也の頭の中で走り回っていた。
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