今はまだ、折れた翼でも
痛いとか、痛くないとかそんなこと考えてられない。

映茉と出会う前の俺なら、こんなになる前にやり返していた。五対一で負けるって分かってても。


ぐっと、五人のうちの誰かが腹に拳を入れる。その衝撃で、俺はとうとう座り込んでしまった。


あの日だって、やり返して、結局負けた。こうやって、地面に身体を預けながら。

そのとき、こいつらが去ったとき。


覚えている。

俺は、死を覚悟したんだ。


このまま俺は死んでいく。胸を張れない自分の人生を呪って、諦めていた。

“死ぬなら最後に謝りたかった”だなんて、そんなのここで命が尽きることを受け入れているのと一緒で。

あのときの俺は、この先の人生に希望なんて見いだせなかったんだ。

ずっと死んでいるみたいに、俺の時間が止まっていたんだ。
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