今はまだ、折れた翼でも
望くんのお父さんの嗚咽が、ベッドの一つしかない大部屋にぼんやりと響く。

……この空間に私は邪魔かな。そう思い扉を開けて部屋を出ようすれば、立っていた望くんに左手を掴まれた。



「……映茉、ここにいろ。……いや、いてほしい」



一瞬迷ったけど、私は数秒してから扉を閉めた。

望くんの隣、元の位置に戻る。



「ごめん、ありがと」

「ううん」



望くんの私を掴む手は、震えていた。

私はそっと、握り返してみる。

私に出来ることがこれなら。


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