今はまだ、折れた翼でも
「……え」
触った瞬間ふわっとした感触がして右の手のひらを見てみると、見事にほこりがたっぷりとついていた。
じっと、後ろから視線を感じる。
そして今まさに、手のひらを見られているような気がしてならない。
こんなほこりだらけの部屋に泊まらせるのかって、絶対思われてる……!
たちまち背中に冷や汗が流れる。
「この部屋は、もう何年も使われていなくてっ……!」
必死に弁解しようとするけど、言ってる途中で、その言葉が火に油を注ぐような行為だって気づいてしまった。
後ろで、微かに息を吸う音がした。絶対何か言われる。こんなことなら、日ごろから部屋を掃除しておけばよかった。
なんて考えても遅く、私は次の言葉に身構えるしかない。
「優太郎って、誰」
……しかし、白岩くんから出てきたのは、予想外の言葉だった。
え、優太郎は誰って……。
「え、あ、優太郎くん、ですか?」
「だから、そうだけど」
おそるおそる後ろを振り返ると、白岩くんは表情筋を一切動かす気配もなく私を見ていた。