今はまだ、折れた翼でも
しばらく歩いていると、やっと人ごみをぬけて開けた場所に出た。

屋台もまばらで、人もあまりいない。

そのまま白岩くんの手も離されてしまう。


温かかった左手首が6月の夜の冷たい空気にさらされて、少し寂しく感じてしまった。

そんなこと思うなんておかしいのに。



「このままじゃ、夜になればもっと人が増えるだろうな」



隣で、白岩くんがふうと息を吐くのを眺める。

そこでようやく、私は白岩くんに聞きたいことがあったのを思い出した。



「白岩くん」


「……なんだ」



歩みを止め、少し後ろを歩いていた私のほうを見下ろす。

私は躊躇なく目を合わせた。



「白岩くんにとって大切な人って、いたりしますか?」



答えによっては、私は白岩くんのもとを離れなければならない。

白岩くんの治りかけの傷が心配でも、また倒れたりしないかが不安でも。

そもそも、私たちは出会ってまだたったの一週間だし、どんなことを聞かされても私は驚かない。
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