今はまだ、折れた翼でも
「泣かないで……。泣いたら、その、かわいい顔が台無しだ……」
「え……」
触れたのは、彼の右手。目をかすかに開かせ、こちらをじっと見つめていた。
優しく、そっと撫でられる。
「私は、かわいくなんか、ないですよ……」
そうだ、泣いてなんか、いられないんだ。
私は、このままでいたくない。
冷たい雨で芯から身体が冷える。体力が、なくなっていく。
もう一度呼びかける声は、もう出なかった。
彼の上半身を力いっぱい持ち上げた。
さっきのことが嘘みたいに、そのまぶたは固く閉じられている。
私はまた泣きそうになるのをじっとこらえながら、どうにか長い時間をかけて、立ち上がらせ、自分の肩に背負わせた。
「……家に、帰ろう」
私は戻るときにバッグを見つけて右肩にかける。
そしてゆっくりと、少しずつ歩いていった。