浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
〝桜川先生の秘書〟として医院長にお会いすることはあっても、プライベートでお会いするなんて初めてのこと。
なおかつ一緒にお食事だなんていうのは、秘書になってから初めての経験だ。

ちゃんと医院長と対等にお話できるだろうか……なんてことを考えていると「待たせて悪い」と、仕事を終えた桜川先生が入って来られた。


「あ……いえ、大丈夫です……」

「ならよかった。 ワンピース、急遽手配したものですまない」

「いえ! そんなこと、お気になさらないでください!!」

「……なら行こうか」


そっと優しく私の手を取り、一緒に秘書室を出る。
もうほかの職員は退勤していて、廊下を歩いていてもほとんど誰ともすれ違うことはなかった。

……とりあえず、それだけでほっと一安心。 桜川先生と手を取りながら歩いているところを目撃されようものなら、きっと病院中お騒ぎだ。

自分勝手かもしれないけれど、それだけは絶対に避けたい。

そんなことを考えながら職員出入口を出ると、目の前には黒い高級外車が停めてあった。
その車が一瞬で桜川先生のだと悟った私は、さらに緊張が増す。


「さぁ、乗って」

「あ、はい……失礼します」


桜川先生は慣れた手つきで車のドアを開けてくれると、私をエスコートしてくれた。
すべてのことが初めてのことだらけで、戸惑ってしまう。

だって……淳史と付き合っていたときは、エスコートなんてされたことなかったから。
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