浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
子どもを産むことも実家に戻って来たことも、間違った選択をしたとは思っていない。

産まれてくる子どもに罪はないし、父親がいなくても私がそれ以上に愛情を注いで育てる。
そう決めたのだ。


雨の中お気に入りの傘を差しながら、近くの産婦人科へと足を運ぶ。

私が向かっている星川クリニックはこの街の唯一の産婦人科で、開業医のわりに大きな病院であり、ここで出産をする妊婦さんは多い。


「おはようございます。 よろしくお願いします」

「藤田さん、おはようございます。 診察券を出してお待ちくださいね」


受付の人に言われた通り診察券を出してソファーに座ると、バッグからスマホを取り出した。
画面を見ると、1通のメッセージが入っている。


『水姫、今どこなんだ?』


メッセージの送信主は、桜川先生。 それもそのはずだろう。

着信も、何度もあった。
妊娠が発覚してから目の前から突然姿を消し、行方不明な私を探していないはずがない。

ましてや〝私と結婚したい〟とまで言ってくれていたのだから……。

だけど桜川先生にとって迷惑を掛けてしまうだけだから、連絡はしない。
もう、桜川先生からのメッセージは100件を超えているけれど、ずっと未読のままだ。
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