再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「コハル、気を付けて」
背後からエルの真剣な声が聞こえて、私は頷く。
わかっている。見た目や雰囲気は彼に間違いなくても、魔王に操られている可能性は十分にある。
絶対に油断は出来ない。
「どうした……?」
私が警戒して後退ると、彼は一転、悲しげに眉を下げた。
こちらに向けられていた手が力なく落ちていく。
「やはり、こんな俺にはもう嫌気がさしたか」
「そういうわけじゃ……!」
あぁ、その顔はズルい。
もし本当に彼が今魔王に操られているのだとしたら、その演技は卑怯すぎる。
私は彼のその傷ついた顔に、すこぶる弱いのだ。
「ならなぜ俺を拒む」
あのときのようにその金の瞳が大きく揺れて、ぎゅうと胸が締め付けられる。
……どうすればいいのだろう。
魔王に操られているのかと訊いたとして、ちゃんとした答えが返ってくるとは思えない。
でも確証もなくいきなり聖女の力を使ってもし違っていたら――。