偽る恋のはじめかた
足早に帰宅して、自分の部屋に入ると「はぁ、」と大きく溜息をついた。それは自分に向けた溜息だった。
化粧を落として、お風呂に入り一通りの日常業務を終えると、雪崩れ込むようにベッドにダイブした。
梨花が桐生課長のこと狙うなんて・・・・・・、
その紛れもない事実に、またショックを受ける。
桐生課長の想い続けた恋が叶うんだから、喜ばしいことなのに、私の心は全く喜べなかった。
梨花に嘘をついてしまった罪悪感が心に重くのしかかり、これ以上考えることをやめた。