偽る恋のはじめかた
部屋に飾られている時計に目を向けると、待ち合わせの時刻が迫っていた。
「時間・・・・・・、やばっ」
フローリングの上に広がる脱ぎ捨てられた洋服たちを見て動きを止める。
コーディネートがまだ決まっていなかったが、時間がないことが後押しをして、一番最初に目についたワンピースに着替えた。
「デートじゃないのに、ワンピースなんて・・・・・・。でも、服に悩んでる時間がない」
全身鏡に映る自分の姿を見てポツリと呟いた。
いつもより念入りに施された化粧に、綺麗め系ワンピース。どこからどう見ても、気合いが入りまくっている。
しかし、化粧を直す時間も、躊躇している時間もないので、そのまま家を出ることにした。
待ち合わせの場所に向かう途中、「この格好で良かったのかな」「なに気合い入れてんの?」「デートじゃないんですけど?」とか思われるかなぁ・・・・・・。
普段とは違う姿で会う恥ずかしさと、不安で心が揺さぶられる。