偽る恋のはじめかた
ピアスやネックレスなどアクセサリーが煌びやかに飾られている、ジュエリーショップが目に留まった。
「桐生課長、ピアスなんてどうですか?欲しいって言ってましたよ?(梨花が)」
「ピアス?・・・・・・穴空いてるの?」
「開いてますよ(梨花は)」
私の耳に視線を向けながら右手がスッと伸びてきた。彼の大きくて男らしい手は、耳にかかった髪の毛をサラッとなぞる。
予想していなかった彼の行動に驚いて、体がビクッと動いた。そんな姿を見られたことに恥ずかしくなり、1歩後退りする。
なんで私の耳を確認するのよ、
私はピアスの穴は開いてないけど、関係ないじゃん・・・・・・。梨花へのプレゼントなんだから。
桐生課長が触れた耳が熱を帯びてくる。
耳が赤くなるのを見られたくなくて、赤く染まった耳を髪の毛でサッと隠した。
そして、バレないように歩く足の速度を早めた。
動揺している気持ちを隠すように、店内の商品を「これ、いいかな?」「あっ、これもいい!」とテンションを上げて見て回る。
私だけ、はしゃいでるようで、自分でやってて悲しくなってくる。
ただ、軽く触れただけで、耳が真っ赤に染まったことがバレるよりはマシだと思った。