偽る恋のはじめかた
ピアスを見て回りしばらく経つと、梨花に似合いそうな派手目のピアスが目に入った。
「桐生課長、これとかどうですか?」
「・・・・・・うーん、似合うかな?」
私が勧めたピアスと私の顔を交互に見ながら、眉を顰めている。
なんで、私の顔を見るんだろう?
桐生課長の行動の意味がわからなくて、不思議で仕方なかった。
私の選んだピアスは、梨花に似合いそうな派手目なピアス。
そりゃあ、素朴な私には似合わないだろう。
このピアスが私には似合わないことくらいわかってる。
梨花のためのプレゼントなんだから・・・・・・、
私に似合わないなんて関係ないのに。
「これとかどうかな?」
桐生課長が選んできたのは、小さいパールのピアスだった。シンプルなのに上品で、素直にセンスがいいと思った。
「かわいい・・・・・・」
あっ、私にとっては好みのピアスだったけど、梨花がつけるとなると、地味かな・・・・・・。
「あの・・・・・・、かわいいですけど・・・・・・ちょっと」
———梨花には地味かな。
と言おうとしたけれど、桐生課長はピアスを見つめて、嬉しそうに優しく微笑んでいた。
そんな嬉しそうな表情を見たら、何も言えなくなってしまった。
好きな人に渡すプレゼントを決めるだけで、そんなに嬉しそうな顔するんだ。
胸がぎゅっと苦しくなった。
落ち込んでしまいそうになる気持ちを溢れさせないように。ぎゅっと、握り拳を作り力を入れた。