偽る恋のはじめかた






「り、梨花は桐生課長が気になるって言ってました。・・・・・・2人は両思いみたいです」




今、目の前にいる椎名さんはどこか悲しそうに引き攣った笑みを浮かべている。その表情を見たら胸の奥がギュッと掴まれたように痛かった。


片思いしていた雨宮梨花さんと両思い。
その事実を聞いて頭が理解しているはずなのに
嬉しいという感情が湧いてこない。


自分の感情がわからなくて、言葉を発せずにいると、椎名さんの表情からは当惑の色がみえた。それ以上に、俺の方が戸惑っていた。



———こんなはずじゃなかった。


数分前までの初めてプライベートで過ごす椎名さんとの時間は、楽しくて暖かくてこの時間がずっと続けばいいのに、と密かに思っていた。


今、目の前にいる椎名さんの瞳は揺れていて、好きな人と両思いと聞いたのに全く喜べない。


なぜ、胸の奥が痛むのか。
なぜ、嬉しいという感情が湧いてこないのか。


自分のことのはずなのに、わからなかった。




わからなくて、自問自答を頭の中で繰り返して、その答えをひたすら探していた。
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