偽る恋のはじめかた
「……申し訳ない!俺は……椎名さんが好きです!」
「え、」
「え、」
戸惑いの声が重なった。桐生課長は長身の身体を腰から折り、頭を下げている。
……今、なんて言った?
聞こえてきた言葉と、目の前の桐生課長の行動が一致しなくて状況を飲み込めない。
それは隣にいる梨花も同じようで、きょとんと目を見開いて固まっている。
下げていた頭をがばっと勢いよく上げた彼と、ぴたりと目が合った。戸惑いの色を見せる私にお構いなしで言葉を続ける。
「……椎名さん、好きです」
まっすぐに放たれる言葉は嬉しいはずなのに、返答に困る。困惑する私の代わりに口を開いたのは梨花だった。
「・・・・・・えっと、お取り込み中、すみません。・・・・・・なんで私ここに呼ばれたんですか?」
梨花はあきれ顔で言い放つ。彼女の意見に全力で同意だった。
なぜ、梨花も呼び出されているのだろう?
その行動が理解できなくて、桐生課長の言葉が頭に入ってこない。