偽る恋のはじめかた
「……寝起きでキスは嫌だって、何回も言ってるでしょ?」
桐生課長はキスを落とそうと顔を近づけてくる。私は、両手で口を覆って断固拒否の姿勢を貫いた。
……だって、朝起きた時は口の中の雑菌が繁殖してるって聞いたことあるんだもん。
口内環境が悪い時にキスなんてできない。
彼の色気を感じて、身体が疼いても断固拒否した。朝日の力は、理性を強化させる力もあるらしい。
「えー、」
不満げな顔をすると、私の上から降りてどこかへと消えていった。
……あれ、怒らせちゃったかな?
内心不安がよぎるも、そんな必要はなかった。
10秒くらいですぐに戻ってくると、また私の上へと跨がる。
「……は?」
そして、すぐに私の唇を奪う。軽いキスだけだと油断してると、彼の熱が口内に入ってくる。
「……んっ、」
口の中には彼から移された爽やかなミントの味が広がる。「なんで爽やかな味するんだろ?」と頭で考えていると、口内を侵食する舌が気持ちよくて考えることも出来なくなる。身体は正直で彼を受け入れる。
「……んっ」
……漏れる吐息に性欲が爆発する寸前で、わずかに残った理性で彼の方をぐいっと押した。やっと離れた唇から息と共に言葉を吐き出す。
「……朝はダメ、って……」
「……マウスウォッシュしてきたから大丈夫」
口の中に広がるミントの味の正体がわかった。
さっきの10秒程の時間でマウスウォッシュをしてきたらしい。
私が寝起きのキスは嫌だと言ったので、しっかり対策をしてきたようだ。そんな彼に心が油断してしまうが、近づく彼の唇を手のひらで静止した。
「わっ、私が、うがいしてません!」
「俺はそんなの気にしないから、いいんだよ、」
上から見下ろす彼からは、色気が漏れ出している。心は惑わされて唇をガードしていた手の力が弱まる。簡単にガードを外されると、剥き出しになった唇を塞がれる。