偽る恋のはじめかた
「ねえ、梨花の好きなタイプは?」
「いきなり、なに?
好きなタイプは、高収入!イケメン!」
ことの真相を確かめるために、意を決して梨花に問いかけた。返ってきたのは、期待を裏切らない答えだった。
「・・・俺様上司が好きって言ったことない?」
「えっ?あったかなあ?」
梨花はコーヒーを飲みながら、首を傾げて考えている様子だ。
「・・・・・あっ、あったかも。ネットドラマで俺様上司が出てくるドラマがあって、その上司がもう、かっこよくてさ!今でもその俳優さん好きだもん」
「ちなみに、なんていうドラマ?」
「えっと・・・・・"私だけの俺様上司"だったかな」
「そのドラマに出てくる俺様上司が現実にいたら・・・・・、好きになる?」
「なるなるなる。絶対なるっ。その俺様上司が、とにかくひたすらかっこいいのよ!」
今まで見たことがないくらい、梨花の声は高らかで、嬉しそうにはしゃいでいた。
「珍しいね、そんなこと言う梨花初めて見たかも・・・・・」
「そうかな?めっちゃハマったんだよね〜。
あんなカッコ良い俺様上司、現実社会にいないかな〜」
両手をあげてグイーッと、背伸びをしながら言った彼女は、声がとても弾んでいて楽しそうで、女から見ても、素直に可愛いなぁと思った。