偽る恋のはじめかた
「和食Aセットでお願いします」
奢りだと分かったので、絶対に自腹だったら頼まないであろうメニューを、値段を気にすることなく好きなものを注文した。
「さっそく本題なんですが、まず最初に・・・。
理想の俺様上司になるために期間をちゃんと設けませんか?」
「期間か・・・。確かに決めた方がいいかもな」
「1ヶ月。1ヶ月で理想の俺様上司になって、梨花に告白しましょう」
「1ヶ月?!
それは短すぎないかい?」
頭を小さく横に振って、難色を示している。
「1年間も片思いしてるんですよね?恋は出会ってすぐが大事なんですよ。正直、桐生課長の印象は最悪です。どん底です。最悪の印象をガラッと変えて、その変えた時が梨花を落とすチャンスだと思います」
「・・・・・なるほど」
「梨花はモテますから、長期戦はダメです。
短期戦で1ヶ月!」
なにか考え込む表情の後に、決意した顔で、コクンと深く頷いた。
———私と桐生課長の1ヶ月が始まろうとしていた