偽る恋のはじめかた
07 飲み会



⋆⸜꙳⸝⋆




歓迎会が行われるのは会社から徒歩で近く、何度か飲み会で利用したことのある居酒屋だった。

店内は間接照明の優しい光に、モダンな雰囲気で落ち着いている。魚料理からお肉料理まで幅広く多彩な料理が堪能出来るのも嬉しい。




「では、桐生(きりゅう)課長から一言お願いします」


「これから、宜しくお願いします・・・・・。
・・・・・乾杯」


「・・・・・・乾杯」
「・・・・・・乾杯」


まったく盛り上がらずに桐生課長の乾杯の音頭が終わった。部署内7割の出席率の飲み会がスタートした。



出席率があまり良くないのは、桐生課長の間違いだらけの俺様上司を演じたせいで相当嫌われたからだろう・・・・・。まあ、これだけ集まればいい方か。




桐生課長とテーブルは別々だったが、私の位置から丁度表情まで見える位置に、彼が座っていた。


今日の主役なのに、他の同僚から話しかけることなく、ぽつりと寂しそうにジョッキでちびちびと飲んでいる。



あとでお酌にしいこうかな。その姿は、あまりにも可哀想でみていられない。
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