偽る恋のはじめかた



書類の確認で少し不安な点があったため、私は隣のデスクの先輩に確認を取っていた。


「その話は必要か?私語はやめろ」


少し話していただけなのに、いつの間にか背後には桐生課長がいて注意される。

整った綺麗な顔で冷たく言い放つので、余計に冷酷さを感じてその言葉が心に突き刺さる。





「今、仕事のことを確認していただけです・・・」


また、いつの間にか背後にいた・・・・・・。
———課長のくせに、暇かよ。


単にお喋りしてたわけではなくて、書類の処理で先輩に確認を取っていただけだったので反論した。



「そんなことも分からないのか?
椎名(しいな)さんは何年目ですか?」


背が高い桐生課長は自然と私を見下す形になる。
見下すように視線を下げて、冷たく言い放つ言葉に苛立ちを覚える。


「お言葉ですけど、仕事で確認することは大切だと思います。確認を疎か(おろそ)にしてミスをしたらその方が大問題になりませんか?」


(言ってやった。仕事をする上で確認は大切だ。
怒られたくなくて上司に確認をせず、それが大きなミスに繋がった新人を何人も見てきた)


「そうだな。確認は大切だ。確認は丁寧に仕事してるということだからな・・・・・」


ほらな。俺様課長を言い負かしてやった!
心の中で精一杯の悪態をつく。



課長(わたし)が言いたいのは、3年目なのにその作業を確認をしなければ分からないのは何故だ?ということだ」


「それは———」


「もういい。この時間が無駄では?仕事に戻る」


私が言い掛けた途中で話を遮り終わらせた。高圧的な口調といい、人を見下した話し方にも腹が立つ。私の脳内は荒立っていた。
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