偽る恋のはじめかた
「椎名さん、鍵は?」
———鍵?なんの鍵だろう?
ここは・・・・・・どこだろう?
ガチャッと音がすると、懐かしい匂いが香る。
この匂いは、いつも嗅いでる匂いだ。
ん?この匂いは、部屋の香りと同じ・・・。
「———んっ?」
鼻に残った匂いで目を覚ますと、目の前は見慣れた光景だった。ここは、私の部屋だ。
でも、視線がいつもより高い。体もあたたかい。
「・・・えっ!桐生課長?!」
驚かずにはいられない。なぜなら、桐生課長の広い背中におんぶされていた。
「課長、え?
ごめん、なさい? えっ?」
私の部屋に桐生課長が?
おんぶされてる?!な、なんで!
状況を飲み込めなくて、ひたすら動揺する。