偽る恋のはじめかた

ゴミや脱ぎ捨てられた洋服で溢れかえっていたはずのリビングが、綺麗に整理整頓されている。散乱していたゴミの代わりに、大きなゴミ袋が2つ。


ここは私の部屋?散乱していたゴミがなくなっていて、乱雑に放置された洋服は綺麗に畳まれている。

なんで・・・・・・、どういこと?


———泥棒?!
ものがなくなったような気がして、最悪のシナリオが一瞬頭を過ったが、なくなったのは部屋中に散乱していたゴミたちだ。

そして、昨日部屋にいたのは泥棒じゃない。


桐生課長、だ。



しばらく考えた後、状況を理解した。
桐生課長が部屋に来たのは夢じゃなかった。


『やりたいことあるんだけど・・・・・・いい?』


昨日、彼が言った言葉が頭の中でこだまする。
その言葉の意味を、ようやく理解した。





「嘘でしょ・・・・・・」



———あいつ、私に一切手を出さないで、
部屋の隅々まで掃除を完璧にして、部屋をゴミと散り一つなく綺麗にさせて帰りやがった・・・。


「酔ってる女をベッドに転がして、手を出さないで帰った・・・・・・?!」



酔ってる女の部屋に上がって、掃除だけして、手を出さないで帰るとか・・・・・・、あいつ○玉落としてきたのか?


何故か心が荒立った。二日酔いで気味悪さが残る頭で、精一杯の悪態をついた。


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