殿下、溺愛する相手がちがっています!

プロローグ

「ラビット、可愛い!」
 
 わたしが10歳のとき、お友達の狐くんに頬へキスされて、前世の記憶を思い出した。
  
 ここは……大、大、大好きだった乙女ゲーム「けもも愛」だ。わたしの黒髪、長い耳と赤い瞳、丸いフワフワな尻尾――もしやわたしは悪役で、公爵令嬢で兎族のラビット・ノワール?

 だとするとわたしの頬にキスをした、この男の子……茶色の髪、耳と琥珀色、モフモフの尻尾は。お友達じゃない……わたしの婚約者の狐族の第一王子のフォックス・グレイス様。


 わたしの愛してやまない推しキャラだ。


「ラビット?」

「⁉︎」

 愛しのキャラが……わたしの名前を呼んで、わたしの側で首を傾げたぁ!


 あれ?
 あれれ!


 わたしの鼓動がポンと跳ねて。
 わたしは真っ黒のウサギに獣人した。


 え、ええ? 獣化ってヒーロー、ヒロインだけではないのぉ?
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