能無し姫は執着系王太子殿下の寵妃になりまして。



「このお守りには、アナを守り幸せにしてくれるように祈りを込めたんだ。俺の代わりにどんなことでも守るように、って」

「ありがと、アール。私を想ってくれて……でも、これからは私ではなくて婚約者様に想ってあげてね」

「まだいないし」

「いなくても、これからその内には出来るんだから。ちゃんとその人を幸せにするのよ」


 今度は、私はアールを抱きしめる。


「じゃあ、これで私は宮に戻るわ。……おやすみなさい」


 そう言ってサロンを出た。アニーと一緒だったけど、私は歩きながら泣いてしまいそうになった。

 だって、明日のこの時間にはこの宮殿にはいないんだと思ったらとても寂しく感じた。
 





 
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