能無し姫は執着系王太子殿下の寵妃になりまして。

◇グロッサ王国への旅路



「――それでは、今までお世話になりました」

「あぁ、アナ。元気でね」


 オリヴィアお姉様、ルークお兄様、お母様にお父様、アールと抱きしめ合い挨拶を交わして私はこれから港町まで使う馬車に護衛騎士にエスコートされ馬車に乗り込み、馬車の窓を開ける。

 家族や今までお世話になった人たちに見送られ、私は住み慣れた宮殿を後にした。

 これから私と一緒に来てくれたアニーと従者であるケインに護衛騎士で女騎士であるエリンは、皇都から貿易の街と呼ばれるユラニケリー港へと向かう。
 だが、そこまで一日半ほど掛かるので途中にあるドニュン領で滞在する予定だ。


「ドニュン領って、チーズの産地よね?」

「えぇ、そうですよ。とても長閑な領地で領主様も一緒に農業をしているとか……」

「へぇ! 楽しそうね! 私もやりたいわ!」

「アナベル様、今からは視察に行くのではないのですよ。もし、何かあったらどうするんですか? それに、到着は夕方です」


 そっか……本で読んだことあってやりたいと思っていたから農業ができるチャンスだと思ったのに。


「そうね、嫁入り前ですもんね……はぁ」


 アニーと話をしているとあっという間に時間は過ぎて、途中でお昼休憩になりご飯を食べてまた出発する。

 そして、日が沈む時間になり私たちはドニュン領に到着をした。





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