能無し姫は執着系王太子殿下の寵妃になりまして。
◇王太子の登場
港町から馬車を走らせること二時間程経った頃、私たちはマーベリックの提案でお茶処で休憩することになった。お茶処といえど、一般庶民が来るようなところではなく、富裕層が来そうなカフェテリアだった。
「アナベル様、ここはご令嬢にとても人気のあるお店なんですよ」
そう言ってマーベリックは、お店の人をベルで呼び何かを頼んでくれた。
「そうなんですね、楽しみです」
王国での初めての食事だものとても楽しみだなぁ……何が出てくるんだろう。
数分後、可愛らしい服を着た女の人がやって来て「お待たせいたしました」とテーブルに紅茶と見たことのないケーキが出てきた。
「マーベリック、これはなんですか?」
「果物のタルトです。クッキーのような生地の上に甘く煮た果物を乗せて冷やしたものです」
「そうなんですね、なんかとてもキラキラしていて宝石みたいで綺麗ですね」
それは本当に綺麗でいつまでも見ていたいくらいのものだ。