能無し姫は執着系王太子殿下の寵妃になりまして。
縁談
――グロッサ王国とは、カスティラン帝国から船で三日ほど掛かるこことは違う意味で大きな国だ。
生まれも育ちもグロッサだという地元民もいるが、ほとんどが移民族で過ごしやすい気候だし何より、国王陛下が平和をこよなく愛する人だから幸せな国と呼ばれている。
「そうなんですね……わかりました。輿入れはいつなのでしょうか?」
「アナベル!? そんな、あっさり決めていいのかい?」
「えぇ……それが皇帝の娘として生まれた私のお役目ですもの。異論はございません」
「そ、そうか……」
お父様は何故か苦笑いをして、落ち込んでいる。自分から縁談の話をしたくせに……
「私は、無理強いするつもりはないんだよ。アナが嫌ならば断ることもできる。私の娘だから嫁がなくてはならないってことはないんだよ」
「私が、無理に嫁ぐと思っているのですか? 私は今まで自由にさせてもらってきました。お姉様やお兄様、アールのように民のために何もできないことが心苦しかったんです。だから、私は私の形で何かしたいと思うのです。それが皇帝陛下の娘として出来ることだと思うので」
「そうか。本当にアナベルは、セシルに似てて本当困るなぁ……」
セシルというのは、セシール・カスティラン。お父様の最愛の妻であり、私のお母様の名前だ。
「え、どういうことですか?」
お父様の言葉の意味がわからない。
だって、私のどこが似ているのだろう? 魔力も何も受け継いでないんだし……顔?
うーん……