夕陽を映すあなたの瞳
第六章 サバサバ女
「おはようございます!」

心は、オフィスに入って来る桑田や先輩達に明るく挨拶する。

「おはよう、久住」
「早いな、もう来てたのか?」
「気合い入ってんなー」

名前のマグネットを貼りながら、先輩達が心に声をかけてくる。

「はい!今日も頑張ります!」

心は元気にガッツポーズしてみせた。

「よし、じゃあ朝礼始めるぞ。明日からいよいよ世の中はゴールデンウィークに入る」
「あはは、世の中は、ですね」
「そう、俺達にとっては、怒涛のサバイバルウィークだ。頑張って生き抜いてくれ」
「はーい、頑張りまーす!」

皆の笑顔に頷いたあと、桑田は真顔に戻った。

「それと、今日の遅番から佐伯が復帰する」
「えっ!佐伯さん、もう大丈夫なんですか?」
「ああ。お医者さんから仕事の許可も下りたらしい。ただ、もちろんジャンプは飛ばないし、しばらくは裏方の作業をメインにやってもらう。体調と、あとは佐伯のメンタルも考慮しながら、徐々に戻してもらえたらと。みんなもフォロー頼む」
「はい!」

返事をしてから、桑田の言葉が引っかかり心は視線を落とした。

(佐伯さんの、メンタル…)

昨日、昴のマンションで夕陽を見ながら、ふいに涙が込み上げてきたことを思い出す。

自分ですらあんな状態だったのだ。
当事者の佐伯は、きっともっと…。

「おーい、どうした?久住。調餌行くぞ」
「あ、はい!」

先輩に声をかけられ、心は慌てて後を追った。
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