夕陽を映すあなたの瞳
「なあ、久住」

食後のお茶を飲んでいると、ふと昴が思いついたように声をかけてきた。

「ん?なあに?」
「うん。あのさ、ちょっと頼みたいことがあって」
「どんなこと?」
「あの、俺が留守の間、もし暇な時間があれば、ここに来てくれないかな?」

え?と、心は首をかしげる。

「いいけど…。何しに?」
「えっと、ロビーのポストに郵便物が溜まってたら部屋に持って来て欲しいのと、あと部屋の窓を開けて少し換気してくれたら…。俺のいない間、1回だけでも来てくれると助かるんだけど」
「うん、分かった。でも、私が勝手に入っても平気なの?何か盗まれないか心配じゃない?」
「久住がそんなことする訳ないだろ?それに、泥棒はそんなこと聞いてこない」

それもそうか、と心は笑う。

「じゃあ、これ。玄関のカードキー。これでエレベーターホールの入り口や、下のポストも開くから」
「うん。確かにお預かりします」

操作の仕方を教わりがてら、心は昴と一緒にマンションを出た。

駅まで送ってくれた昴に、心は向き直って礼を言う。

「今日は色々ありがとう!お邪魔しました」
「こちらこそ、美味しい料理をありがとう。それと、留守番頼んでごめんな。無理だったら気にしないで」
「うん、分かった。じゃあ、明日に備えて今日は早く休んでね。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう!」

二人は笑顔で別れた。
< 36 / 140 >

この作品をシェア

pagetop