夕陽を映すあなたの瞳
第八章 同窓会
「伊吹くん、お帰りなさい」
「ただいま。色々ありがとうな、久住」
「ううん、全然」
「さ、とにかく入って」

5月8日。
ようやく終わったゴールデンウィークの次の日に、心は昴のマンションを訪れた。

「昨日帰って来たばかりなんでしょう?時差ボケは大丈夫?」
「ああ、慣れてるから平気。久住こそ、せっかくの休みの日に悪いな」

そう言って昴は、心に紙袋を渡す。

「はい、これ。お土産」
「え、わー!いいの?」
「もちろん。開けてみて」
「ありがとう!なんだろう…」

心はワクワクして包みを開ける。

「マグカップだ!かわいい!」

日本では見かけない、なんとも洒落たイラストのマグカップを、目の高さに上げてじっくり見てみる。

「持ち手もクルンってなっててオシャレだね。色も綺麗だし。いいの?頂いちゃって」
「ああ。色々してもらったのに、高価のものじゃなくて申し訳ないけど」
「ううん!そんなことない。凄く素敵なマグカップ。使うのが楽しみ!」

心の笑顔に、昴も頬を緩める。

「あと、こっちはお菓子なんだ。チョコレートにクッキー。これはジャムの詰め合わせ。で、こっちは…」
「ええー、こんなにたくさん?!」
「そんなにたくさんでもないよ」
「たくさんだよ!それに、どれもこれも美味しそうだし…ん?」

ふと真顔に戻った心に、どうかした?と昴が声をかける。

心は、テーブルの上のお土産に顔を寄せた。

「うわー、なんだか外国の香りがする!」

そう言って目をつぶり、大きく息を吸い込む。

「はあー、不思議な気分。ねえ、伊吹くん」
「ん?」

昴が顔を上げると、いきなり心はテーブルに身を乗り出して昴の耳元に顔を近づけた。

(く、久住…何を?)

固まっている昴の耳元で心が囁く。

「伊吹くん、サンフランシスコの香りがする」

すうーっと小さく深呼吸してから心は首をかしげ、昴の正面でにこっと笑った。

「ちょ、ちょ、チョコ食べる?」

とっさに変なことを口走る昴に、うん!と心は頷く。

「開けていい?わー!色んな種類がある!これは?キャラメルトリュフかな…」

箱の裏とチョコを真剣に見比べる心から視線を逸らし、昴は真っ赤な顔で、はあー…とため息をついた。
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