夕陽を映すあなたの瞳
「えーっと、これが名簿ね。受付で会費をもらったら○をつけるの。あと、遅れて来る予定の人は、この星マークの人」

紅茶とお菓子でひと息ついてから、心は昴に説明する。
同窓会に向けての準備は、ほぼ整っていた。

「受付は、慎也くんと愛理がしてくれるって。18時半には来てもらうことになってる。それとね、慎也くんがビンゴを用意してくれたの。景品をみんなから募ってみたら、凄い物が色々集まったのよ。この間、慎也くんに写真送ってもらったんだ。ほら、見て!」

心はスマートフォンの写真を昴に見せる。

「これはね、フットマッサージ。それから加湿器に、ワイヤレスイヤホン。どれも新品なんだよ!」
「ええー?!凄いな」
「でしょ?みんな、自分では使わないから寄付するって言ってくれたの。他にもまだあるよ。それでね、私も職場のペアチケットがあるから、持って行くね」
「ペアチケット?久住の職場の?」
「うん、そう。入場券」

(え、久住の職場って、なんだ?)

以前、何気なく仕事について聞いた時、言いづらそうにしていたのを思い出す。

(話したくない事情があるんだろうと思って、それ以来聞いてないけど。なんだろう?入場券って、どんな職場だ?)

首をかしげる昴をよそに、心は話を続ける。

「この景品は、みんな当日持って来てくれるから受付で預かるね。それからこれが二次会のお店。慎也くんが手配してくれたの。一応今のところ、8割くらいの人が参加予定。でも人数は、増えても減っても大丈夫だって。あ、レストランの方は、一応前日に片桐さんに連絡入れるね。あと、何かあるかなー。大丈夫そう?」

ようやく顔を上げた心に、昴は改めて礼を言う。

「久住、何から何まで本当にありがとう。俺、肝心な時にいなくなって…。久住はゴールデンウィークも仕事だったんだろ?ごめんな、忙しいのに。身体壊さなかったか?」
「そんなの、全然平気だよ!大げさだなあ。あ、そうだ。伊吹くん」
「ん?何?」

心は少し照れたようにうつむく。

「あの、ありがとうね。夕陽」
「え?…あ!ああ。いや、そんな」
「凄くね、心が温かくなった。ありがとう」
「いや、別に。俺じゃなくて夕陽のおかげだし。それに、夕陽も俺のじゃなくて、みんなのものだし…」

ブツブツ呟いていると、急に心が笑い始めた。

「あはは!伊吹くんたら、変なの。俺の夕陽じゃなくてみんなのもの、だって。頭いい人でも、変なこと言うんだね」

ふふふ、と笑い続ける心に、昴は何も言えずに見とれていた。
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