世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「はぁぁぁっ」

グイッと緑茶を飲み干すと私は年季の入った有田焼の湯呑みをデスクに置いた。デスクの上は綺麗に片付けて帰ったはずだが、既に営業部からの得意先へ提出する見積書の作成依頼が山盛りきている。更にはパソコンにも大量の見積依頼メールが到着している。もはやため息しかでない案件である。

「梅将軍おはよう御座います。朝から凄いため息ですけどどうかされましたか? 」

視線をあげれば、私が切り盛りしている見積課の課長補佐である森川明菜(もりかわあきな)がにこりと微笑んでいた。

「明菜ちゃん、おはよ。もうね朝からね、顔だけキラキラしてる世界級イケメンに落とした小銭踏みつけられてすっごいムカついた上に、会社に来てみれば相変わらず凄い量の見積依頼にこのまま切腹したいくらいだわっ」

「あはは。切腹は困りますね。見積依頼はいつものことですけど、その話、世界級イケメンだったなら目の保養はできたのでは?」

「まあ、ただのイケメンさえも絶滅危惧種なのに世界級イケメンだったから保養といえば保養だけど……」

私はさっきの世界級イケメンを思い出す。切れ長の瞳に柔らかそうな黒髪、あといい匂いだった。

(って何考えてんのよ、梅子っ……これじゃあホントに欲求不満みたいじゃない……)

「梅将軍?」

「あぁ、気にしないで何でもないの」

「ふふっ、目の保養はお肌にもいいらしいですよ。で、早速ですけど梅将軍のところに届いてる見積依頼五十件ほど受け取りますよ」

「あー、もう明菜ちゃんいつもほんっとありがと!明菜ちゃんが見積課の若い子達を仕切ってくれてるからこの見積課が存続できてるのよっ」

私は両手を合わせて拝むポーズで明菜にペコリと頭を下げる。

「大袈裟ですよ、それにこの見積課がまわってるの梅将軍のおかげだと思ってますから。皆が源課長を梅将軍と呼ぶのは女の戦場であるこの見積課でいつも課長が先陣を切って敵陣という名の見積の山に向かって突っ走ってくれるからですよ」

「え、そうなの?」

「ふふっ、そうですよ」

明菜は、ベージュのボブを揺らすとオレンジ色のルージュを引き上げた。

「私からみたら明菜ちゃんって天使だわ、だって頭の上に輪っかついてるもん」

「あはは。梅将軍にそのように行って頂けるなんて光栄ですね。有難うございます。あ、ちなみに梅将軍、新入社員研修会、何時からですか?」

私は、その言葉にこめかみを抑えながら明菜に答える。

「はぁ、そうだった。営業第一エリアグループのアイツの講義のあとだから、11時から。今年もまたキラキラしたのが入ってくるんでしょうね……」
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