世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
俺はアラームを止めてからマウスを左手に持ち、梅子の作成した都市開発の見積りに目を通す。

「相変わらず丁寧で正確な見積りですね」

図面には事細かにトイレセット、洗面化粧台、その他諸々を施工するのに必要な部品品番がネジ単位で書き込みされており、図面は梅子の直筆の書き込みでほぼ真っ黒だ。

俺は数十ページに及ぶ見積りを一枚一枚確認していく。

「え?経費、人件費まで計算?これ見積課の範疇じゃねぇだろっ……」

思わず俺は独り言が飛び出した。それと機内で同時に含み笑いをしていた由紀恵の顔が思い浮かぶ。

「あのクソババア」

(てゆうか、この見積りの出来栄えを心奈と梅子さんに競わせてるってことだよな?エサは俺で間違いない……)

俺は拳を握りしめた。

梅子が数週間前に、由紀恵に認められたいと話していたことを思い出す。おそらく見積りの出来栄えで俺との今後の交際が掛かっている為、梅子は必死にこの見積りと向き合ってきたのだろう。

「一人で抱え込まないでって言ったじゃん……それにこんなん出来レースだろっ……何で俺に言わねぇんだよ」

心奈の見積りの腕は、おそらく梅子より遥かに劣るはずだが商品カタログと社内システムである程度カバーできる。それに心奈は俺と結婚するためにTONTONの商品知識について以前から勉強していた。さらに心奈は経理課の配属である上に、花田不動産の一人娘ということで大学では俺と同じ経済学部だった。経費、人件費等のお金周りは圧倒的に心奈が有利だ。

(ただ……見積経験者の方が図面からの正確な商品、数字の拾い出し、粗利益率の計算は有利……勝負となると五分五分か、経験値のある梅子さんがわずかに上か……いやもしくは……)

俺は梅子の見積りをスクロールしていき、スマホの電卓アプリを液晶画面に浮かべた。
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