世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
俺は羽田空港に到着し、ハイヤーで由紀恵を自宅へ送るとTONTON株式会社のエントランスで降りた。キャリケースを転がしながら、従業員出入り口で由紀恵からもらったばかりの役員用のIDカードを通し、エレベーターに乗り込む。

「マジ貰っといて正解だな」

一般の従業員用のIDカードでは残業はできるが就業時間以降一度外へ出てしまえば、セキュリティと労働基準法の関係から中に入ることは出来ない。

(梅子さん……大丈夫かな……)

数時間前、梅子と会話したのは数分だけだったが梅子は泣いていた。由紀恵との会話から、梅子は俺の為に心奈と同じ都市開発の見積もりを作成していること察した俺は、梅子の性格上ギリギリまで見積りと向き合い残業していると踏んで羽田からこうして直行した。

「当たりか……」

見積課の窓のブラインド越しに仄かに明かりが漏れている。

(6日……ぶりだよな)

正直、日が経てば経つほどに梅子にどんな顔をして会えばいいのか分からなくなっていた。それでもこの六日間、俺は気づけば梅子の顔が頭によぎり、梅子に会いたくて仕方なかった。

俺は唇を湿らせてから扉を開けるとすぐにため息を溢した。

梅子は、図面の上に両腕を重ねたまま規則的な呼吸を繰り返している。デスクの上の梅子のスマホを見れば早朝5時にアラームが設定してあり、パソコン画面には完成した見積書が映っている。

「……風邪ひきますよ」

そっとその頬に触れれば、僅かに梅子の唇が動いた。

「……せか……」

「ん?」

余程疲れているのか梅子は俺の名前を最後まで呼ぶことなく、また寝息を立て始めた。

「ここ泊まって、朝5時からまた見積りするつもりとか過労死しますよ……って俺のせいだよね……ごめん」
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