世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
第2章 契約交際ってことで
「源課長、まだ帰んないんすか?」

「だから、もう先に帰りなさいって」

俺がパソコンをシャットダウンして、商品カタログを読むふりしながら梅子を眺めて2時間経った。他の社員はとっくに帰宅して、俺たちの他には誰もいない。

「源課長と帰りたいんで」

「私は一人で帰るのでお先にどうぞ」

「同じマンションだし一人は危ないんで、送ります」

梅子がこちらをジロリと睨んだ。

「あのね、今までも一人で帰ってたし誰も私なんて気にしてないからっ。そもそも、入社早々ただでさえ目立つあなたと帰って変な噂たったらどうすんのっ」

「俺は大歓迎ですけど」

「冗談ばっかり言わないで!」

(入社早々、冗談で上司にこんなこと言うかよ)

しかしまさかこんなご縁があるなんて、今後俺も五円玉は一生大事にしたいと思う。もう一度会いたいと思っていた梅子にまさかこんな形で会えるとは思っても見なかったから。

俺は時期尚早なのは分かってるが、オフィスに二人きりのいま、梅子を口説こうと心に決めていた。昼休みに見積課の社員の一人にさりげなく聞けば、梅子はまだ独身、そして恋人はいないとのことだった。

あまり時間はかけたくない。あの殿村とかいうやつに先越されかねない。

(アイツ……梅子とか、呼び捨てしやがって……)
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