世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
囁かれた耳は奥まで熱くなる。

私は思いっきり世界の足を踏んづけた。

「痛って」

「ばかっ、揶揄わないで!こんなことする暇あるなら商品品番一つでも覚えなさいっ」

上司らしく一喝すると私は猛ダッシュ状態の心臓を隠すように、黙々とパソコンに向かって指先を動かしていく。

「俺……揶揄ってないんすけどね」

世界は小さく呟きながら私から離れると、ボールペン片手に商品カタログにようやく視線を向けた。

(もう、何なのよ、このガキンチョ……それに私もガキンチョ相手にドキドキして……何なのよっ)

跳ね続ける鼓動を鎮めるように手を当てて深呼吸する。

今思えばもうこの瞬間から私は恋に落ちてしまっていたのかもしれない。世界の果てまで続く無限の恋愛ドツボにはまって、抜け出せなくなるとも知らずに、私は後戻りできない恋をはじめていたのだ。
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