世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「ひっく……私……」

「あー……その顔ツボっすね。マジでさっさと押し倒したいんで返事ちょーだい?」

「末永く……となりに居させてね」

世界が意地悪く笑うと、私を目いっぱい抱きしめた。

「もう二度と離すかよ。じゃあいただきまーす」

世界の唇が首筋に触れてチクンとする。目眩を覚えそうになりながら、私はふと我にかえると、世界の胸元をトンとおした。

「ばか、ここ通路じゃないっ」

「あ、気づいた?俺はマンション住民の皆さんの前でも全然平気っすよ。俺の奥さんなんだってマンションどころか世界中に自慢したい気分なんで」

「もうっ……なんて言ったらいいかわかんないじゃない」

「あ、そんな顔みたらマジ限界。今日は朝まで寝れないですから、三年分噛ませてくださいね。じゃあ早く梅子さん家いこ?そもそも俺、住むとこねぇし」

「えっ!そう、なの?」

「うん。一緒に住も」

「ど、同棲ってこと?」

「ま、籍入れるまでは、そうすね。ま、同居人っていうかー、番犬みたいな?今日から梅子さん専用の番犬だと思って末永く可愛がってくださいね。ご存じのとおりちょっと噛み犬ですけど」

「ちょっとどころじゃないじゃない!」

世界が子供みたいにケラケラ笑う。私もつられて声を出して笑った。

目の前の世界の声が世界の笑顔が世界の体温が、世界を構成するすべてが愛おしくて幸せだ。また涙が滲みそうになったのを気づいた世界が両手を広げた。

「おいで」

「ンッ……」

そして、抱きしめられれば、長らくほったらかしにされていた唇はすぐにあったかくなる。ゆっくりゆっくり熱を交換しながら、甘く痺れていく。

「好き……」

「俺は大好きだよ」

もうこの幸せの味を覚えてしまった私は、もう一生どこにもいけないだろう。甘い言葉と世界の毒に、身体中を侵されて飼い殺されるのはきっと私の方だ。


「世界くん……大好き」


──もう二度と離れない。

晴れの日も雨の日も風の日も、雷の日だってきっと二人なら大丈夫。

二人寄り添って歩く未来への道がいま目の前にはっきり見えるから。

「もう一生俺の腕の中に居ろよ」

私は世界の唇に全てを委ねながら、返事をするように背中に回した両手にぎゅっと力を込めた。
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