世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
エピローグ
──『梅子さん、起きて。今日も愛してるよ』

世界が帰ってきてから半年後。ベッドサイドの世界に瓜二つの犬型の目覚まし時計からは今日も世界の甘い声が聞こえてくる。

「んんっ……朝……?」

その目覚まし時計の声に私は重たい瞼をこじ開けた。隣を見れば世界が長い睫毛を揺らしており、その左手には昨日交換したばかりのお揃いの指輪が光っている。

そしてベッドの周りには世界の脱ぎ捨てた銀色のタキシードと、私が世界に脱がされた純白のドレスがヴェールとともに散乱している。

「あっ……大変……今日会議よ!」

手を伸ばして目覚まし時計のスイッチを切り、すぐに起き上がれば、隣の世界が私を再び毛布の中に引きずり込んでくる。

「梅子さん、いい匂い……」

「ちょっと……離しなさいよっ」

「いいじゃん。俺の奥さんの匂いいっぱい嗅ぎたい」

「変態っ、二人そろって結婚早々遅刻とか切腹案件じゃないっ」

私の話など全く聞いてない世界が私の髪に顔を埋めてくすぐったい。

「いいじゃん。もう俺に永久就職したんすから」

「ばかっ、それとこれとは話は別でしょっ……きゃ……」

世界が私を組み伏せると左手に指輪をはめた掌で私の顎を持ち上げる。

「このシャンプーどこのだっけ?」

「え?せ、世界くんと同じシャンプーですけど?」

「キスしていい?この匂いツボ」

「ほんとに……ダメだって……ンンッ」

繰り返される甘い罠に目の前がくらくらする。

「今日の会議ってさー、11時からでしょ。今日くらいフレックスでいきましょ。そもそも会議って海外マーケティングの商品企画についての検討会議じゃん。俺が海外マーケティングの部長なんでちょっとくらい遅れても問題ないっすよ。むしろ会議中止でも全然問題ないっすね。言おうか?」

「ばかっ、なんてこと言い出すのよっ……」

「正直、会議より俺の奥さん食べる方が大事なんで。ってことで、そろそろ黙れ」

「な……ちょっと……ンンッ……あっ」

世界が前髪を掻き上げながら、意地悪く笑うとあっという間に私の素肌に唇を落としていく。
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