世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
課長になった記念に自分へのお祝いで買った、手元のエルルスの時計を見れば二十二時をすぎている。

「んーーーっ、やっと最寄り駅まで帰ってきたわね」

私は夜空に向かって伸びをすると、自宅マンションに向かって真っすぐに歩いていく。世界は電車の中ではおとなしく、誰かから来たメールの返信に忙しそうだった。

(なんなの、結局彼女いるんじゃないの)

世界がなぜ会ったばかりの私に、あそこまで言い寄るのかまるで分からない。かといって世界は私より一回りも年下だ。さっきの行動のあれこれの理由をいちいち聞くのもおかしい気がして私は何も聞かなかった。

世界は私の隣に並ぶと、すぐに私の方に顔を向けた。

「あの、一個いいっすか?」

「な、なによ」

(180……センチくらいかな……)

世界は身長が高い。隣に並べば身長160そこそこの私は、世界を見上げるしかない。

「業務外は梅子さんって呼んでいいですか?」

「へ?……な、んで?」

「なんで?」

世界が途端に子どもみたいに口をとがらせている。

「あの、いい加減にしてもらえます?」

「なによそれ、こっちのセリフでしょっ。ちなみに上司だからって色仕掛けしたって評価は正当にしかしないからねっ!……きゃっ」

世界が私の腕を掴むと強引に自分の胸元へと引き寄せる。世界のジャケットから甘い世界の匂いがして瞬時に顔が火照る。全身の血液がドクドクと音を立てて、さらに身体と一緒に心臓まで抱きしめられたようにぎゅっと痛くなる。
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