世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
私はテーブルにお気に入りの印籠マークが描かれた手帳をしげしげと眺める。

「やば、この印籠マーク、しぶすぎ……」

私の唯一の趣味は時代劇『暴れすぎ将軍』を前髪を縛ってポテチをお供にだらだらと鑑賞すること。その『暴れすぎ将軍』から、今年の手帳が年末に1000冊限定販売された際、ファンクラブ経由でそのうちの一冊を何とか手に入れたのだ。

「えっと……」

開けば目が痛くなりそうなほどに小さな黒い字で手帳は埋め尽くされているが、土日だけ真っ白だ。思わず眉間に皺が寄った。母から例の件で、打診のあった土曜日は空いている。

(空いてるけど……)

私はスマホに母の名前を浮かべると、短く『予定があり行けません』と返信した。

「それにしても……いつのまにこんな仕事人間になったのかしら」

見れば今日の日付に赤丸で、『11時〜研修会講師』の記載がある。

「あぁ、おまけに今日か、新入社員研修会。またキラキラした瞳のキラキラした名前のガキンチョ達が入ってくる季節ね……」

(ん?あれ?私が入社したのって……もう12年も前なわけ?!……)

私は慌てて洗面台の前へと駆け寄った。
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