15歳差の愛してる.
窓がゆっくり開いて
だんだんと顔が見えて来た

その顔は
よく見覚えのある顔



何で?



「……店長?」

「寒いでしょ?乗りな、」

「…はい」

訳の分からないまま
乗り込んだ店長の車は私の心と対象的に
ポカポカと暖かかった


店長の臭いで
いっぱいになった車内。

息をする度に
店長の爽やかな臭いが
体の中に入ってくる

車内はどこかで聞いた事のある歌だけど
何の歌かは分からない歌が響いていた

「寒かったでしょ」

「…はい」

私、本当に冷たい

気を効かせてくれてるのに
ぶっきらぼうな返事をしたまま店長とは逆の
窓の方を見つめていた


「そりゃ寒いよな」


無言の車内

だけどなぜか
だんだんと安心して来て
私の突っ掛かっていた
何かが取れた気がした

――――ポタッ

制服のスカートの上に
一粒の雫が落ちた

氷みたいに固くなった
心が溶け
水滴となって
瞳からこぼれた





この涙
止めようとは思えなかった

止まる訳ないのは1番私が分かっていたから

体中の水分が無くなる程泣いた


「いっぱい泣きな」

そう言って店長は道を外れて
車を止めてくれた


初めてだ
こんなに泣いたのは

永遠と止まらないんじゃないかって位泣いた

店長はずっと背中をさすってくれた

優しさが背中から伝わってくる

「おっ…お兄ちゃん…に何も…してあげ…られなっ…なくて…私…私…」

泣きながら店長に縋り付く私に店長は
ずっと

「うん、うん」

と言って聞いてくれた


何分位経った頃だろうか?


涙が止まった頃には

背中から体がポカポカになり


袖は絞れそうな位
ビチャビチャになり


心は


晴れていた
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