タロくんとハナちゃん
「━━━ねぇ!」
そんな四人の会話を聞いて、丸雄が言った。

「ん?何、丸雄」

「華子ちゃんは“タロちゃんの”恋人なんだよね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあなんで、理一郎にはタメ口で、タロちゃんには敬語なの?
俊彦にも。
見た感じ、俊彦とタメっぽいし。
それとも俊彦よりも、年下なの?
あ、だったら…なんで、理一郎にはタメ口なの?」

「あ、理一郎くんは私の従兄なので。
物心ついた時には、もう一緒にいたんです。
なので普通に話せますが、それ以外の人にはどうしても敬語が抜けなくて……
タロくんには“彼氏なんだし気軽にタメ口で”って言ってくれてるんですが、どうしても癖というか…敬語で話してしまうんです……」

「そうなんだ。
物心ついた時に……あー、そうかもね……」
丸雄は納得したように頷き、少し考え込んで呟いた。

「え?」

「あ、ごめんね。
僕も、タロちゃんのこと本当の弟みたいに思ってて。
ほら、普通…愛人の息子なんて、正妻の息子からしたら嫌だろ?
でも僕達は、愛人の意味とかわからない時から一緒に過ごしてきたんだ。
僕の母さんは、僕が五歳の時に亡くなったんだ。
その頃にタロちゃんが生まれて、タロちゃん親子とはよく会ってたんだ。
僕達は最初から、兄弟だった。
だから、タロちゃんに対して嫌悪感はないんだ」

そう話す丸雄が、とても穏やかで優しい。

あぁ…タロくんのこと、好きなんだろうなぁーと思い、華子は温かい気持ちになっていた。

「………」
そんな華子を横で見ていた、太朗。
複雑な思いに支配される。

まさか……!?ハナちゃん、丸雄に惚れた!?

「ハナちゃん!!」
「………っへ?ど、どうしました!?」

焦ったような太朗の表情に、華子も驚き顔を覗き込む。

「ハナちゃんは“僕のことだけが”大好きだよね!?」

「え?」

「お願い!言って!?
タロくんだけが、大好きって!」

「あ、今ですか?」

「うん、今!」

「で、でも…みんないるし……」

「言って!」

「だ、大好きです…タロくん」

「ほんと?」

「はい」

「良かっ…た…」
そう言って、安心したように華子を抱き締める。



「お願い…不安にさせないで……?
僕はもう…ハナちゃんがいないと…息の仕方もわからなくなるんだ……」

太朗は華子の肩に顔を埋めて、苦しそうに言葉を吐いた。
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