タロくんとハナちゃん
「━━━━重症だな…(笑)」

外の灰皿の前で煙草を吸いながら、中を見ている理一郎と丸雄と俊彦。

中にいる太朗と華子を見て、丸雄が苦笑いをして言った。

「ん?タロのこと?」
同じく煙草を吸いながら、中を見て言う理一郎。

「あぁ」

「タロさん、ハナちゃんにベタ惚れっすから!」
俊彦も煙草吸おうとしながら、フフッと笑った。

「そんな感じだね!
………って、こら!俊彦は、まだ未成年だろ!
煙草!
理一郎も!」

「えーー!
丸雄さんだって、中学から既に吸ってたじゃないすかー!」
「俺は、つい先日二十歳になったよ。
…………って、俺も高校ん時から吸ってたけどー」

「だからって……」

「フフッ!俺達、悪い子ですもんねー!」
俊彦が、クスクス笑う。

「特にタロと丸雄兄弟は、そんな容姿してかなりの悪者だし(笑)」
理一郎も笑っている。

「ハナちゃんは、想像もしてないでしょうね~(笑)」
「あぁ、とんでもないもんな、兄弟は!」

「そう?
僕達は、至って“普通”だよ?」
理一郎と俊彦の言葉に、目をパチパチさせて言う丸雄。

「いや、普通じゃねぇよ」
「タロさんと丸雄さんは………」


一方の太朗と華子━━━━━━━
「ハーナちゃん」
「はい!」

「呼んだだけ(笑)」
「え?」

「可愛い!」
「え?え?」

「ハナちゃんって呼んだ時に、ハナちゃんが“はい!”って言って僕を見るでしょ?」
「はい」

「そん時の表情(かお)、好きなんだ~!」

「そうですか?」

「うん!」

「………」
笑っている太朗。
しかし、華子はなんだか悲しそうだ。

「ん?ハナちゃん?」
華子の顔を覗き込む。

「敬語…」
「ん?」

「嫌…ですよね…?ほんとは」
「………うーん。そうだなぁー、そりゃあ理一郎に対してみたいに、タメ口がいいなって思うけど」

「ごめんなさい。
意識してるつもりなんですが、何故か敬語になっちゃって……」

「でも、嫌じゃない」
真っ直ぐ見て言う、太朗。

「タロくん…」

「それに“敬語で話す、ハナちゃん”がハナちゃんでしょ?」

「え?」

「僕は、ハナちゃんが好きなんだ。
鈴木 華子って人が好き。
敬語だからとか、ヒビリだからとか、どんくさいからとかそんなのは、関係ない。
どんなハナちゃんだって、僕の大好きなハナちゃんだから!」

「………」
太朗の言葉に、目を潤ませる華子。

「え?え?ハナちゃん、泣いちゃった。
ごめんね!
えーと……」
わたわたする太朗。

そんな太朗に華子は“フフッ!”と笑った。

「え?ハナちゃ━━━━━んんっ!?」

華子は、太朗に顔を近づけ“私も大好きです”と言ってキスをした。
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