タロくんとハナちゃん
「え?指輪?」
ピタッと止まり、そのまま覗き込む太朗。
俊彦に、太郎丸のしている指輪のことを聞いていたのもあり、思わず反応する。

「私、タロくんとのお揃いの指輪が欲しいです!
…………な、なんて……(笑)」

苦し紛れとはいえ、水羅の話を聞いてペアリングが欲しいと思った華子。
咄嗟に太朗に言った。

「ペアリングか……!
うん!いいよ!
ハナちゃんのお願いなら、何でも叶えてあげたい!
それに!お揃い、大歓迎!」

嬉しそうに華子の話に乗る、太朗。
二人は途中下車して、街に行くことにした。


「━━━━どんなのがいいかな~?」
ジュエリーショップに向かい、ガラスケースを覗く。

「あ、あの…」
「ん?」

「向こうのブースの、指輪がいいです……」
先程から自分の意見ばかりで、さすがにワガママかなと思いながらも、恐る恐る窺うように言った華子。

“ONLY ONE”と書かれたブースを指差した。
一点ものの商品を扱っているブースだ。

しかし太朗は、心底嬉しそうに笑って頭をポンポンと撫でた。
「うん!もちろん、いいよ!
二人だけの指輪がいいもんね!」


「━━━━━━でも、嬉しいな!」
選びながら太朗が、不意に微笑み言う。

「え?」

「最近、ハナちゃんが素直にこーしたいあーしたいって言ってくれるから、凄く嬉しい!」

「あ…」

「ハナちゃん、気を遣ってばっかでしょ?
ずーっと、思ってたんだ。
どうすれば、ハナちゃんの本音を引き出せるかなって」

「え……」

「ワガママ、たくさん聞かせて?
ハナちゃんが僕を必要としてくれるワガママなら、どんなことでも大歓迎だから!」

「タロくん…
ありがとうございます……!」

それから二人は、ぴったりなペアリングを見つけ購入した。


「ハナちゃん、左手!出して?」
「はい」

薬指に指輪が光る。

「はい!ハナちゃんも、僕につけて?」
「はい」
華子も同じように、太朗の左手の薬指に指輪をはめた。

「フフ…幸せ~!」
「はい!
……………でも、まさか花柄でこんな素敵なのがあるなんて……!
可愛いのにシックで、タロくんの指にもとても馴染んでますね!」

「そうだね!
これ、藤の花のモチーフだよね?」

「はい。タロくんの“佐藤”に“藤”の字が入ってるから(笑)
それに、花言葉……」
「ん?」

「タロくん、藤の花言葉知ってますか?」
「知らないなぁー」

「私、昔花言葉にハマって調べたことがあって……
確か“歓迎”“優しさ”です」
「へぇー!」

「まだありますよ?
“恋に酔う”」
「確かに、僕達は酔ってるね!お互い(笑)」


「そして“決して離れない”です……!」
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