仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 そんな毎日を送る中で、一人の男性に声を掛けられた。

「この資料用意してくれたの岡本さん?」

 見せられた資料を見て、慌てて答えた。

「あっ、はい。そうですけど……何か不備でもありましたか?」

「いや、すごく助かったよ。ありがとう」

 初めはそんな、たわいも無い会話だったと思う。そこから少しずつ、この男性大和壱成(やまといっせい)と会話することが増えていく。

「岡本さん、おはよう。今度の会議に使うやつ……」

「こちらですね」

 大和の話が終わる前に引き出しから資料を取り出し手渡すと、驚いたような顔をしながらフッと大和が優しく笑った。

「岡本さん、そんなに頑張らなくても良いんだよ。少し肩の力を抜いて……この資料も来週までにと頼んだものだろう?」

「ですが……私が頼まれた物ですし、早いほうが皆さんも助かるのではと……」

「そうか、俺的には助かったけど無理はいけないよ」

 そう言って頭をポンポンと叩かれる。

 それだけで心がポカポカと温かくなった。そこから大和は美月の心の中にスッと入り込んできた。ちょっとした優しさが嬉しくて、笑顔を向けられるとドキドキして。忘れていた感情が呼び覚まされていく。

 この会社に入社することが出来て良かったと、本当に思った。

 

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