ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「大丈夫?」
「……は、い、ックション!」
続けてくしゃみをする彼女はブルッと身体を震わせ両手で身体を抱きしめた。
「スカーフなくなっちゃって、寒くなっちゃった」
茶目っ気のあるくりっとした瞳をこちらに向けた。
笑顔が可愛い。
「良かったら、これを……」
黎はそう言って、たたんで鞄に入れていた自分の薄いブルーのマフラーを広げて彼女の首にかけた。
「え?」
びっくりしたのか、後ずさっている彼女を見て、黎は苦笑いした。