【電子書籍化予定】麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
「英那ちゃんの部屋の鍵だよ」
「すごい、ですね……とっても広いです」
「まぁ、無駄に広いよね」
私は部屋の鍵を渡されて中を覗くと、まだ荷解きしていないからダンボールなどが散らかっている。片付け、しなきゃなぁ……と考えていると宗一郎さんに「次、寝室ね」と手を引かれて部屋を出ると寝室に向かった。
そういえば、寝室……一緒に寝るんだよね。そりゃ、夫婦だし一緒に寝るに決まってるよなぁと思ったら急に実感が湧いて来て顔が熱くなるのを感じた。
それから、寝室に行ってリビングにキッチンお風呂にトイレと順番に案内されてリビングのソファに一旦座る。
「少し休憩しようか、疲れたでしょ?」
「そうですね、少し……」
「少し、休憩して、ディナーに行こう」
宗一郎さんはどこから出てきたのか、お茶を出してくれた。
「仮のマグカップだからまた見に行こ、そういえば……このタワマンの三階から五階まで共有スペースがあって、ジムとカフェとレストランがあるんだけど、今日は疲れたしディナーはそのレストランに行こうって思ってるんだけどいいかな?」
「え、はい。全然、大丈夫です」
私が頷けば、宗一郎さんはとても優しく微笑んだ。
――それから。
食事が終わり、宗一郎さんとの初めての夜がやってきた。